Logo

KEYWORDS

...MORE

CLOSE

TITLE.

グラフィックデザイナー・吉本多一郎さんが楽しむ
“人と人の輪” を育む、ジョンソンタウンでの豊かな暮らし

都心から、電車に揺られること1時間。グラフィックデザイナー・吉本多一郎さんが暮らすのは、かつて米軍の住居地域であった区画を、その雰囲気を残しながら整備されたジョンソンタウン。埼玉の入間市にある、通称 “タウン” は自然に囲まれ、住民との距離が近く、コミュニティはさながら日本の長屋のよう。さっそく吉本さんの豊かな暮らしを覗いてみましょう。

吉本多一郎さん プロフィール

グラフィックデザイナー。独学でデザイナーの道に進む。現在は、アパレルや音楽関係のデザインを多く手がけている。プライベートでは、昨年娘さんが誕生し、新米パパとして奮闘中。栄養士の奥様と3人暮らし。

ワンフロアに個々の空間がつながっている平屋建て。中2階には、吉本さんのワークスペースがある。「どこにいても互いの気配が感じられるし、生活導線がシンプルだから住みやすいですよ」と奥様。

時を重ねた住宅街に、新しい家族の居場所を

吉本さん夫妻が、ジョンソンタウンへ引っ越したのは約5年前のこと。結婚を機に、港区・南麻布や世田谷区という都心から、時を重ねたこちらの住宅街へ移住したといいます。

「僕も奥さんも、昔からアメリカのオールドカルチャーだったり、開放的な雰囲気が好きなんですよね」

ジョンソンタウンには、かつてアメリカ兵と家族が暮らした “米軍ハウス” と、その軍人用住宅をモチーフに建設された “平成ハウス” がリズムよく建ち並んでいます。
夫妻は、生活空間がワンフロアに集約されている平屋の平成ハウスを選択。決め手は最頂部で約3mという贅沢なまでに高い天井と、“洞窟みたいな小部屋” だったといいます。

「開放感溢れる、スケールの大きな空間に惹かれました。中2階にある天井高が抑えられた小部屋は、包み込まれるような安心感があるというか。ここをワークスペースにしたら、仕事がはかどりそうだなって」

しかし物件や環境には惹かれたものの、グラフィックデザイナーという都内を主戦場とする職業ゆえ、池袋駅まで電車で40分という立地に躊躇もしたそう。

「それまでシティボーイだったんで(笑)。でも、慣れるとなんてことなかったです。都内には撮影や打ち合わせがあるので、週に2、3回通ってますけど、今となっては1時間で行けるんだ、っていう感覚ですよ。“住めば都” とは、よく言ったもんだなって思います」

光に満ちた白い空間で、家族と向き合う

ジョンソンタウンの物件は賃貸であっても、DIYが盛んなアメリカ本国と同様に、建物内部はカスタマイズが可能とのこと。
そのため、住民は庭にピザ窯を造ったり、リビングに小屋を設置するなど、思い思いに家の中を改装しているそう。吉本さんも諸先輩に倣って、空間に手を加えています。

「一番頑張ったのは、壁と天井の塗装かな。本来のもの(無塗装のOSB合板)もロッジ風でいいけど、もう少し落ち着いた感じにしたくて。塗装職人の友人と、一週間くらいかけてペイントしました。強い方向性がなく、かといって単調にならないよう、白に黄色と赤を少し混ぜたのがこだわりですね」

奥にある左の画は、奥様の祖父が描かれた日本画。その隣の扉風のオブジェは、吉本さんの手作り

「白い内装にしたことで、家の中が明るくなった」と吉本さん。そんな光に満ちた空間には、ヴィンテージ家具や奥様の祖父が描かれた日本画、手作りのドライフラワーなど、住み手を物語るさまざまなものが心地よく調和しています。

いわゆる日本風の玄関がないため、ホームセンターで購入した石を並べて靴を脱ぐスペースをDIY

「インテリアのテーマは決めていないんですけど、出来るだけ少ない色、素材で構成するように心がけています。家具は経年変化を感じる、味のあるものに惹かれます。うちにあるヴィンテージ家具は、ほとんど実家から持ち出したもの。誰が何の目的で手に入れたのか分からないんですけど、謎にあるんですよね」

視力検査に使うメガネのセット

大正時代につくられたというソファ

一番の戦利品であるロッキングチェアは、ご実家で “洗濯物掛け” になっていたので救済したとか。そのお気に入りのチェアに座って、もうすぐ1歳になる娘さんをゆらゆらと抱っこしている時間が、至福のときといいます。

「だって好きな椅子に座りながら、大好きな女の子を抱いているわけだから(笑)。チェアの揺れが心地いいのか、すぐ眠ってくれるんですよ。娘をあやしているようで、僕が癒されている。たまらなく幸せなひとときですね」

「お醤油貸して」的な、昔ながらのご近所付き合いが楽しい

「おーい! 多一郎!」

取材中に、外から吉本さんを呼ぶ声が。聞けば、二軒隣に住んでいる仲良しのご近所さんだそう。ジョンソンタウンは家と家の間に塀がないため、住民同士の距離が近く、コミュニケーションも盛んに行われています。

「仲良しの住民とよくテラスや庭でバーベキューをするんですけど、さっき声をかけてきたご近所さんが大型の設備を持っているんで、かなり本格的なんですよ。この間なんて、豚を丸ごと焼きましたからね。夜は、誰かの家でへべれけになるまで飲んだり、週末は丹沢や富士山にキャンプに行ったりも。
『お醤油貸して』も実際にあるし、缶蹴りしていた子供たちが『缶くださーい』って、突然うちに来たり。いちいち新鮮で、楽しいんですよね」

楽しいだけでなく、住民が互いに助け合って生活しているのもここの魅力だと話します。

「奥さんは子育ての悩みをよく相談しているし、雪が降ると『ついでだから!』とうちも雪かきをしてくれたり。こういう人間関係は、何にも代えがたい。物件や街並み・環境に惹かれてここに決めたけど、今はこういう住民との交流に、何より魅力を感じています」

「見た目はアメリカだけど、コミュニティは日本の長屋のような感じかもしれませんね」と吉本さん。人と人の理想的な関係がここにはあるのかもしれません。

手に入れたのは、自然と対話するような暮らし

2階には “CAVE(洞窟)” と名付けられた、吉本さんのワークスペースがあります。床や壁の一部は本来のOSB合板仕上げとし、天井高も低いため、リビングルームよりもコージーな雰囲気に。

「適度にこもり感があるので、以前より集中して作業に取り組めるようになりました。仕事面での変化で言うと、ここは物件も環境もユニークだからか、クリエイターがたくさん住んでいるんですけど、みんな売れっ子ばかり。ありがたいことに仕事をもらったりして、仕事の幅も広がりましたね」

“広がり” といえば、ここへ越してから自身が手がけるデザインにも変化があったそう。

「都心に住んでいた頃は “クラブの地下” みたいな、ザ・アーバンなデザインが好きだったけど、ナチュラルなテイストのものを手がけることも増えました。近所の人とキャンプや外遊びを楽しんだり、太陽の向きや季節の移り変わりを感じながら生活したり、自然とお近づきになったからかな」

「ここは窓が四方にあるので、光や風、虹、水滴など、日常に自然現象が入る。おかげで、家の中でも日々を楽しめるようになりました」とにっこり。住まいが吉本さんの暮らしに大きな変化をもたらしました。

デザイナーとして、まちづくりに参加していきたい

この地に腰を据えて5度目の春を迎え、すっかりジョンソンタウンの “古株化” してきた吉本さん。今後は、デザイナーとしてまちづくりに参加していきたいといいます。

「過去に何度か、タウンのクリスマスカードを制作させてもらったんですよ。そのほか、まちに似合う街頭サインやグッズのアイデアも浮かんでいるので、機会があればデザインしてみたいです。街灯をオレンジに統一したら、よりアメリカっぽい雰囲気を出せると思うんですよね」

聞けば、自宅のなかにも手をかけたい場所が。

「奥さんが(ベッドではなく)布団で寝たいと言うんで、寝室に畳を敷こうかなと。リビングスペースの床も、今はモルタルだけど、そろそろ娘が歩き始めるので、転んでも危なくないようクッションフロアを敷かなくちゃですね」

そう言って、見つめる先には美しく整備されたタウンの緑が。窓から入る木漏れ日は心地よく、まるで木が葉っぱを揺らして歌っているよう。
吉本さんの住まいは、“豊かな暮らし” という曖昧な言葉の本質を教えてくれる、そんな理想的なお住まいでした。

JOHNSON TOWN(ジョンソンタウン)