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賃貸から持ち家へ。エッセイスト・柳沢小実さんが語る、40歳からのご機嫌な暮らし方

エッセイスト、整理収納アドバイザーとして、暮らしにまつわる本の執筆や、雑誌を中心に活躍している柳沢小実さん。これまで築40年以上のヴィンテージマンションに好んで住んでいた柳沢さんが、東京都内に一戸建てを新築し、引っ越したのは2017年秋のこと。見栄を張らず、背伸びせず、住みやすい家に。予算のバランスをしっかりと考え、“地に足のついた” 家づくりを心がけたという新居には、家族と快適に、毎日を機嫌よく過ごせるヒントがちりばめられていました。

柳沢小実(やなぎさわ・このみ)さん

エッセイスト、整理収納アドバイザー。旅や料理など多くの趣味を持ち、軽やかな暮らしを提案する。収納好きが高じて、整理収納アドバイザー1級を取得。すっきり、ラクチンな収納法を日々研究中9月末に新刊『考えない 探さない ラクして整う住まい考』(KADOKAWA)が発売に。
http://www.furarifurari.com

「代えの効かない条件」を優先し、内装は最小限に

長らく賃貸派だったという柳沢さんご夫婦が、家を建てようと舵を切ったのは一昨年のこと。安くはない賃料を払い続けるのであれば、自分たちの住まいをつくるのもいいかも、と踏み切ったそうです。
ゼロから自分の好きなように家を考える——。夢は無限に広がるなか、柳沢さんが重視したのは、“安全性” と “機能性” でした。

「家づくりにおける “夢” の部分って内装だと思うんですけど、正直なところ、建てるだけで予算は精一杯。外装や間取りは一度建ててしまったら変更は難しいけど、内装はあとからリフォームで変えられる。『普通がいちばん』と呪文のように唱えて(笑)、まずは “丈夫で機能的な箱” を作ることに徹しました」

箱そのものは作りこまずに、さっぱりと。“全面タイルのお風呂” “輸入の無垢材ドア” “おしゃれなスイッチプレート” といった、“夢” の部分は心にそっとしまって、設備などにしっかり予算をかけたと言います。

「具体的には、家のすみずみを快適な温度で満たす全館空調、断熱性能の高いサッシと屋根などを取り入れました。今までは、見た目重視による動線の悪さや、暖房効率がよくないなど、ヴィンテージマンションゆえの不便も楽しんできたけれど、40代に入り、ちょっとしんどくなってきたのも事実。設備が最新だとやっぱり快適だし、この先のさらなる変化のためにも、暮らしやすい家にしたかったのです」

“家事がラク“が最優先の間取り

間取りも、暮らしやすさを左右する大きなポイント。あとから変更が難しいこともあり、かなり真剣に検討したそう。

「とはいっても、LDKは南向き、水回りは北側、寝室は南東と、ほぼセオリー通り。少し余裕があったので、私のワークスペースと、登山が趣味である夫の “山部屋” も設けることができました。細かい部分はこれまでに住んだ家々で身につけてきた “生活の知恵” を参考にしながら、決めていった感じです」

ワークスペースを設けたおかげで、オンとオフの切り替えができるように

具体的に “生活の知恵” を活かした場所でいうと、例えばキッチンをアイランド型にして、二方向から出入りできるように。ダイニングとの距離を短くし、料理を運ぶ時にスムーズに移動できるようにしました。また、洗濯機と室内干しする寝室を行き来しやすくするなど、 “動線” を最適化して、家事の時間的・体力的負担を少なくする工夫を取り入れています。

仕事部屋の入り口はアールの間口に。以前住んでいた家のお気に入りのディテールを新居でも採用したのだそう

こだわったのは、掃除や片付けのしやすさも然り。掃除機がかけやすいように、室内は極力間仕切りやドアを設けずのびやかな空間に。さらに床には、汚れにくい加工がされている無垢材をチョイス。収納も必要な場所に必要な分だけ確保しているため、モノに煩わされるストレスもありません。

「この先、一生懸命に掃除をしなくてはならない家だと疲れてしまう(笑)。空間を整えることが負担にならず、いつもほどほどにすっきり見えるのが理想。掃除のしやすさも、快適な暮らしを支えてくれていますね」

可愛らしいタイルが印象的な洗面は、天板と洗面ボウルが一体型で凹凸が少ないため、サッと拭けば掃除が終わり!

オーダーキッチンが、我が家の顔

洗練されたグレーのキッチンは、機能性はもちろん、お部屋のインテリアとしての美しさも兼ね備えています。朝の清々しい日差しの中で見るキッチンの美しさは、格別なのだそう。

収納する物に合わせて棚のサイズを指定しているので、使い勝手は抜群

大容量の食洗機を導入したところ、毎日の家事がぐんとラクに!

「印象的なデザインで、ずっと飽きずにいられるかなという不安もありましたが『扉が無垢材だから飽きたら白く塗ればいい』と自分を納得させて、勇気を出して “えいっ!” と選びました。だけど、思い切って決めてよかった。家づくりにかかる金額を思うと、夢見てばかりはいられませんが、ここぞというところは妥協せずこだわると、家への愛着を生み、日々の生活を豊かにしてくれますよ」

飾り棚には、大好きな台湾の茶器や急須、茶葉など、お茶の道具が並んでいる

そう言いながらキッチンに立ち、お茶を淹れてくれた柳沢さん。その満ち足りた、幸せそうな表情が印象的でした。

キッチン対面にあたるダイニングの窓には、ウィリアム・モリスのカーテンを。光が当たると繊細な表情を見せてくれます

静かに心癒される、お気に入りの家具と夫婦の時間

やわらかな日差しが差し込むリビングには、お気に入りの家具や植物が心地よく調和しています。シンプルな空間でひときわ存在感を放つのが、ハンス・J・ウェグナーのデザインによる、カール・ハンセン&サン社製のソファです。

「家具は長くつき合うものだから、一緒に歳を重ねられるように、少し背伸びして選ぶようにしています。このソファは “すっきりした木の脚の軽やかなソファ” を探しまわり、ようやく見つけたもの。家具も家づくりと同じで、メリハリが大切。抑えるべきところは抑え、かけるべきものにお金をかければ、全体の印象が引き上がり、垢抜けた空間をつくってくれるようです」

イギリスのアンティーク本棚を食器棚として使用

夜、家事が全部終わったあと、ソファにもたれ、読書するのがお決まり。隣には、お酒を飲みながらリラックスするご主人がいて……。好きなものに囲まれた空間で過ごすひとときは、心癒される時間だと言います。

迷った時は、“足し算”より“引き算”の発想を大切に

“丈夫で機能的な箱” をテーマに家づくりを行った柳沢さんですが、当初は “自分らしさを出さなくちゃ” と内装に頭を抱えることも多かったそう。一人でもがき、焦って、空回り。考え抜いた末に「個性ってそこまで出さなきゃいけないのかな?」という心境に至ったと言います。

「家は家具や物、人が入って完成するもの。だから自分らしさを無理に入れなくても、住んでいれば自然とにじみ出るのかなって。それに家づくりに “魅せる” という要素を1個加えてしまうと、どうしてもそっちに引っ張られてしまう。それより私は、家族と快適に暮らしたい。地に足のついた暮らしがしたいと思ったんです」

迷った時は、余分なものを素直に取り除く “引き算の発想” を大切にしたという柳沢さん。

「お金をかけて派手にして、失敗したら悲しいので。迷うくらいなら、必要なものだけ取り入れた方がいい。“引き算” をして、体力(予算)を残しておいた方が次に繋がりますからね。今、この瞬間の最大限で作り込むのではなく、あとから手をかけられるよう、余白を残しておいた方がこの先も楽しめるじゃないですか」

入居後に設置した、Creamore Millのフックはインテリアのアクセントに

リビングのドアには、アンティーク風のパーツを接着

余白を残した分、柳沢さんの家づくりは、まだまだこれからも続きます。

「ワークスペースにかわいい雑貨を飾ったり、柄物の壁紙を貼ったりしてゴテゴテ作りこみたいと思っています(笑)。思い切ったアレンジが気軽にできるのは、持ち家のよさですね」

余白は “気持ちの余裕”。大切なものと不要なものを見極め、新しいものとの出会いや家づくりを楽しむ。そんな発想も柳沢さんのご機嫌の毎日につながっているようです。